スマホを落としただけなのに
2018.11.8 感想を追記しました。
公開2018年11月2日|上映時間116分
あなたの全てを知っている存在。それは家族でも恋人でもなく……“スマホ”です。
『このミステリーがすごい!』大賞で惜しくも受賞を逃しながらも、推薦枠である“隠し玉”として出版された志駕晃のミステリー小説を、早くも中田秀夫監督が映画化です!実は『このミス』大賞のファンであり毎年チェックしている私としては最高に楽しみな作品ですよっっ!!!
今やどんな書類よりも個人情報が凝縮されたスマートフォンを題材に、そこに潜む危険性をスリリングに描いた本作。現代に沿ったテーマ性と社会問題にも切り込んだ内容を見ることができるでしょう!主演の北川景子ほか、人気俳優陣が多数出演しているのも見どころですね~。
さてさて、映画『スマホを落としただけなのに』について紹介します!
作品情報
『スマホを落としただけなのに』あらすじ/予告動画
彼氏の富田(田中圭)に電話をかけた麻美(北川景子)は、スマホから聞こえてくる聞き覚えのない男の声に言葉を失った。たまたま落ちていたスマホを拾ったという男から、富田のスマホが無事に戻ってきて安堵した麻美だったが、その日を 境に不可解な出来事が起こるようになる。
身に覚えのないクレジットカードの請求や、SNSで繋がっているだけの男からのネットストーキング。
落としたスマホから個人情報が流出したのか?
ネットセキュリティ会社に勤める浦野(成田凌)に、スマホの安全対策を設定してもらい安心していた麻美だったが、その晩、何者かにアカウントを乗っ取られ、誰にも見られたくなかった写真がSNSにアップされてしまう。時を同じくして、人里離れた山の中で次々と若い女性の遺体が見つかり、事件を担当する刑事・加賀谷(千葉雄大)は、犯人が長い黒髪の女性ばかりを狙っていたことに気が付く。
スマホを拾ったのは誰だったのか。
連続殺人事件の真犯人はいったい誰なのか。
そして明らかになる“奪われた麻美の秘密”とは?
監督:中田秀夫
『リング』『仄暗い水の底から』といったジャパニーズホラーを代表する監督の1人でありながらサスペンスや恋愛、人間ドラマも撮っている監督です。ハリウッドでリメイクされたり海外進出もしています。
霊的なこと以外でも人間が恐れを抱く心理を熟知しているので、今作『スマホを落としただけなのに』でも、恐怖感をあおる革新的なSNSミステリーが期待できそうですね!
中田秀夫監督の魅力や作品については他記事にて紹介しています。
脚本:大石哲也
『デスノート』『デスノート the Last name』『去年の冬、きみと別れ』などヒット作の脚本を手掛けてきた脚本家です!
サスペンスやミステリーで緻密な脚本を書いて世間を驚かせ、今作も緊張感のあるミステリーなので大石哲也の得意とするところでしょう。驚愕の展開が待っていそうです!
企画/プロデュース:平野隆
『予告犯』『図書館戦争 THE LAST MISSION』『64 ロクヨン 前編/後編』『祈りの幕が下りる時』など数々の人気作品に携わってきた敏腕プロデューサーが、今作の企画プロデュースを務めます。
原作「スマホを落としただけなのに」:志駕 晃
数々の名作を生みだしてきた 『このミステリーがすごい!』大賞で惜しくも受賞を逃したものの、推薦枠である“隠し玉”として出版された志駕晃のミステリー小説です。
『このミス』大賞は、意外と“隠し玉”のほうがエンターテイメント性が高く読者からの根強い人気を集めたりするので、本作の映画化に期待している原作ファンも多いかと思います。
主要キャスト
北川景子
(役:稲葉麻美)
『ハンサム☆スーツ』『謎解きはディナーのあとで』『ジャッジ!』『探偵はBARにいる3』など多くの作品でヒロイン役として活躍しています。
演技そのものは上手じゃねえですけど、演じるキャラに個性的な空気感を付与するので、役者としてはわりと好きですよ。何より華があるし、BJNですからね。……あ、美人ですからね!
今作では、彼氏のスマホが何者かに拾われたことをきっかけにネット被害に巻き込まれます。何やら隠された秘密があるようです。
田中圭
(役:富田誠)
TVドラマを中心に何かとずっと見かける売れっ子俳優ですが、さらにドラマ「おっさんずラブ」で時の人となり、もはや人気が止まりませんな!映画では『東京大学物語』『相棒シリーズ X DAY』『図書館戦争』などに出演。
濃すぎない甘いマスクと、クセのない自然な演技をするので制作側としては非常に扱いやすいんじゃないかなー。
今作は主人公の彼氏役で、スマホを落としちゃってヤベェ奴に拾われます。きをつけなさいよ!
千葉雄大
(役:加賀谷学)
『アオハライド』『殿、利息でござる!』『帝一の國』などに出演。
男から見てもかわいい。モデル出身でキラキラしてて少女マンガの実写とかそういうキャラ押しのタレントでしょ?だなんて思ったら大間違い!意外とダークな一面を持ち合わせた「ビジネスかわいい」役者で、演技に対する情熱をひしひしと感じますね。
今作では、連続殺人事件を担当する刑事の役です。
成田凌
(役:浦野善治)
『残穢 住んではいけない部屋』『キセキ あの日のソビト』『ビブリア古書堂の事件手帖』などに出演し、『君の名は。』では声優としても活躍。
人気急上昇中の俳優で、本作以外にもいくつもの出演作品が公開予定。流行りの脱力系イケメンですね。
今作では、スマホの安全対策などを担うネットセキュリティ会社の社員を演じます。
他キャスト
バカリズム/要潤/高橋メアリージュン/酒井健太/筧美和子/原田泰造 など
感想(ネタバレあり)
ここからはネタバレ含む鑑賞後の感想になるので、まだ観ていない人は気をつけてくださいねー。
前述しましたが私は「このミステリーがすごい!」大賞のファンであります。そこにJホラーの巨匠・中田秀夫監督と、ミステリーを得意とする脚本家・大石哲也と、敏腕プロデューサーの平野隆が制作陣を固めているとあって期待値がかなり高かったです。
だがしかしbut!
結論から言いますと、ミステリーファンなめんな、ですよ。
序盤のほうは良かったんですよ。彼氏(田中圭)がスマホをタクシーに置き忘れて、明らかにヤバそうな奴に拾われ…「ネット犯罪あるある」が散りばめられて不安が煽られていきます。
一方で、山中にて黒髪ロングの女性死体が5人も発見され、猟奇的な連続殺人事件の捜査が展開されていきます。IT企業から転職してきた新人刑事・加賀谷(千葉雄大)の的確な推理により捜査が良い方向へと進む。
ふむふむ…これは危険な香りがするぞ。ここからどうなるんだ!?ドキドキ…!
と思ってたら。
ある人物の登場により、すべてがぶち壊れました。いや、こいつ完全に犯人やん。じゃあ、あれもこれも、こいつの仕業やん。
と、かなり早い段階で犯人もトリックもわかってしまいました。だって明らかに不自然な登場ですもん。出てきた瞬間に「えぇ…」となりましたよ。
犯人ネタバレしますよ?いいですね?
成田凌が演じるネットセキュリティ社員・浦野です。
ソーシャルブックの繋がった知人たちにまったく会うことなく、いきなり紹介されて登場。しかも絶対重要なポジションを任されていそうな成田凌とかいう俳優。これは違和感しかない!せめて無名に近い俳優あるいは名脇役をキャスティングするとかしないと、ミステリーファンなら誰でも勘づきますよ。
もちろん配役だけじゃなくてストーリー上も不自然なので、浦野がネットセキュリティ社員であることに違和感の少ないような伏線を張っておかないと。あまりに唐突すぎる。
そこからは丸見えの伏線が張り巡らされ、途中に仕掛けられた新人刑事・加賀谷が犯人かもしれないというミスリードも、ミスリードであることが見え見えすぎて騙されるわけもなく。
トリックもほぼすべて「なりすまし」でゴリ押しなので驚かされる部分がなかったですね…。
主人公・稲葉麻美(北川景子)に隠された秘密に関しても「なりすまし」であることに早い段階で気付いてしまうので、どんでん返しにも全然なってないです。
私の中では完全にミステリーとして終了したわけですが、まだサイコスリラー・サスペンスの道が残っています。異常犯罪者に追い詰められるスリルや、黒髪ロングを狙う動機、捜査で犯人にたどり着くまでの過程などを楽しめればいいんです。
ところが動機はたいして深掘りされることなく、捜査も犯人と似た境遇の新人刑事・加賀谷の勘でほぼ解決してしまいました…。
唯一、残されたスリルですが北川景子の怖がる演技が残念すぎて感情移入できない。謎のタイミングで稲葉麻美が自分の過去を語り出して萎える。加賀谷刑事なぜ一人だけ登場して他の刑事遅れてきたんだ。とツッコミどころ満載でございました。
北川景子にはこういうシリアスで自然な演技を求められる役をやらせちゃダメでしょう。『ハンサム☆スーツ』や『謎解きはディナーのあとで』や『ジャッジ!』などコメディ要素の強い作品では輝くんですけどね。
ここまで酷評しちゃいましたけど、良いところもあります。
SNSの危険性やネット犯罪について改めて認識させられる作品ではあります。犯行の手口とか結構リアルで実際に起こり得るような内容です。身に覚えのない迷惑メールやなりすましなど、経験のある人も多いんじゃないでしょうか?そういった意味では現代に合ったテーマ性の映画だったように思います。
そして本作での一番の収穫は、成田凌の怪演ぶりに感心させられた事です。演技については本作で抜きん出て目立っていました。彼の表情には唯一、恐怖を感じたほどです。
サイコパス感を出すために振り切った演技を見せてくれ、成田凌の俳優としての可能性が広がったように思います。
まとめ
おすすめ度:☆☆(2/5)
監督、脚本、企画プロデュース、キャスト、とかなり豪勢な制作陣になっていたため期待しすぎたのか、肩透かしを喰らってしまいました。
ミステリー慣れしていないスマホ世代の若者たちならば楽しめるかもしれませんが、私には合いませんでしたね。
正しく使えば素晴らしく役に立つスマホも、ひとたび悪意にさらされると持ち主には地獄が訪れます。みなさんはスマホを落とさないように!