監督:成島出
出演:福士蒼汰/工藤阿須加/黒木華/小池栄子/吉田鋼太郎
あらすじ
印刷会社で営業マンとして勤める青山隆は、努力をしてもなかなか成果を残せず上司に怒鳴られてばかりいた。毎日のサービス残業に疲れ果て、駅のホームで電車へと倒れそうになった青山を助けたのは、「同級生のヤマモト」と名乗る男だった。彼と話しているうちに、青山はだんだんと明るさを取り戻していく。ようやく成績も伸び始めたとき、大変なミスが発覚してしまいーー。
感想(ネタバレ含む)
真面目なアナタにこそ観てほしい!疲れた心に一筋の光を与えてくれる、働く人のための感動物語。
良かった点
青山隆を演じる工藤阿須加さんに、もうとにかく感情移入しまくります。彼の陰鬱とした悲しげな表情に、胸がしめつけられる思いをしました。
働いている人なら、誰しも大なり小なり経験するであろう社会の理不尽と抑圧的な権威。強かに乗り越えていくのも大事だけど、人生の意義を考えたとき、そこから離れるという選択肢も立派にある。希望に向かって道を変えるのは、「逃げ」でも「負け」でもないはずです。だって、歩いてる先にでっかい熊がいたら、戦わずに別の道を選びますよね?(笑)
ヤマモトのおかげで青山は明るさを取り戻していくわけですが、本当にこっちまで嬉しくなります。実家での両親との会話は、涙無しには観られません。「人生は、自分と、自分を大切に想ってくれる人のためにある」というヤマモトのくれた言葉が、このシーンでまさに胸の奥まで突き刺さってきます。
気になった点
作中で「ん?」となった箇所が2つ。私なりに解釈して納得はできたので、書いておきます。
ひとつ目は、喫茶店のようなところでヤマモトと喋っている時に、隅のほうから青山を見つめている怪しい女性。これはたぶん、幻覚でしょう。過度のストレスによる鬱状態では、幻覚や幻聴を見聞きする場合があります。会社での出来事を話していると、誰かに監視されているのでは、と感じてしまった。それぐらい上司に抑圧されていたし精神的に追い込まれていた、という事でしょう。なぜそんなホラーみたいなシーンを説明も無しに入れたのか…それは観客にヤマモトを幽霊だと思い込ませるためのミスリードです。つまり製作側の都合ですね。
ふたつ目は、ヤマモトが純だと嘘をついた理由。これに深い意図はなく、突発的な嘘だと考えるのが自然でしょう。青山に同級生という嘘がバレて追及されたが、ヤマモトは自身の運転免許を持っておらず身分証明できる物が無かった。しかし「青山を救う」という目的を達するためには、信用してもらわなくてはならない。そこで形見として持っていた純の免許を見せる事にした。つまり、出会った最初の「久しぶりやな、同級生のヤマモトや!」と一緒で、苦し紛れに言った嘘。青山を救うためには手段を選んでる場合じゃなかったんですね。
しかし、バヌアツの部分はちょっとなぁ…。べつにヤマモトがバヌアツで頑張るのはいいんです。青山の退職を見届けたあと姿を消したのも、今度はあの子供たちの役に立つため(青山とこれからも仲良くつるんでいたい、という未練を断ち切るため)だと考えれば筋は通ります。
なので青山までバヌアツに来るよう仕向けたりしたのが変ですし、青山も救われたからといって追いかけて一緒にボランティアってのは唐突すぎます。すべて蛇足とまでは言わないですが、一度会いに行くだけとか、手紙などでやり取りして仲を保つとか、それぐらいのほうがリアリティがあるかなと思いますね。
評価
総合満足度:☆☆☆☆ (4/5)
わくわく度:☆☆ (2/5)
キュンキュン度:☆ (1/5)
かなしみ度:☆☆☆ (3/5)
カンゲキ度:☆☆☆☆☆ (5/5)
びくびく度:☆☆☆ (3/5)
スッキリ度:☆☆☆☆ (4/5)
今時ここまでブラックな会社あるわけないじゃん大袈裟だよ、と思う人もいるでしょうが、現実は結構ありますよ?実際、私も知人も経験があります。私はわりと躊躇なく「やーめたっ」と転職しましたが、知人はかなり悩み苦しんでいました。だから感情移入しすぎました。自身や知人にそういった経験がなくブラック企業の実態を耳にしない人は、ピンと来ない映画かもしれません。けれど、そういう人も「人生のより良い選択」や「苦しむ人に手を差し伸べる事」の大切さを学べる、素晴らしい作品だと思います。