映画『ユリゴコロ』感想・評価レビュー

沼田まほかるさんの小説が原作ですね。これまで何度も手に取ってきたんですけど、読みたい本が多すぎて後回しになってしまい未読です。ちなみにPG12ですよ!

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監督:熊澤尚人
出演:吉高由里子/松坂桃李/松山ケンイチ/佐津川愛美/清野菜名/清原果耶/木村多江

あらすじ

カフェを営む亮介(松坂桃李)の日常はある日突然崩れ去った。男手ひとつで育ててくれた父親が余命わずかと診断され、結婚を控えていた千絵(清野菜名)はこつ然と姿を消してしまったのだ。新しい家族を作ろうとしていた矢先の出来事を受けとめきれない亮介は、実家の押し入れで一冊のノートと巡り会う。「ユリゴコロ」と書かれたそのノートに書かれていたのは、美紗子と名乗る女(吉高由里子)の手記。人を殺めることでしか自分の生きる世界と繋がることができない女性の衝撃的な告白だった。

そんな美紗子もやがて洋介(松山ケンイチ)と運命的な出会いをし、「愛」というこれまで知る由もなかった感情に触れることとなる。しかしそれはさらなる悲劇の幕開けにすぎなかった。
自らの失意の中、美紗子の人生の奥深くに触れていくにつれ、次第にその物語が創作だとは思えなくなる亮介。いったい誰が、何のためにこれを書いたのか。なぜ自分はこれほどまでにこの手記に惹かれるのか。そして機を待っていたかのように、千絵のかつての同僚だったという細谷(木村多江)が、千絵からの伝言を手に亮介の前に現れた……。

(公式サイトより引用)

予告動画

 


映画『ユリゴコロ』予告編

感想(以下ネタバレ含む)

前後半の圧倒的な対比が秀逸!まったく共感できなかったはずの殺人者の心情の変化に、憐憫が湧き上がる!!

俳優ピックアップ

旬なタレントで客を集めるぞ!というのとは違う、実力派ぞろいのキャスト。作品の本気度が伝わってきます……!

 

吉高由里子さん。久しぶりにばっちりハマり役でしたね。吉高さんは万能型じゃないので安っぽい役を与えると本当に見てられない。しかし今作では計り知れない闇を抱え、思うままに行動し、それでも出会いを通じて変化していく女を見事に演じ切っています。こういう事なんだよ吉高由里子という女優は!

松坂桃李さん。初期の松坂さんは芝居が臭かった印象でしたが、最近はごく自然かつ特徴的な演技で魅了してくれます。殺人者のノートにのめり込んでいき、自身の狂気と葛藤する姿には異様な緊張感を覚えましたよ。

松山ケンイチさん。まぎれもなく最高峰の役者ですね。罪を抱え、それでも真っ直ぐ生きようとする男は、愛する人の真実を知り苦悩します。彼の男泣きには涙腺もゆるみました。カッコ良すぎます!

こっそりイチオシの女優・清野菜名さん、清原果耶さんも出番は少ないですが注目していただきたい。

前半のエグさったらもう…

PG12じゃなくてR15くらいにした方がいいんじゃないの?と余計な心配をしてしまうほど、目を覆いたくなるシーンが続きます。

美紗子の幼少期には血などは出てきませんが、精神的にエグい。サイコパス全開の描写は当然ながらまったく共感できず、ヒヤヒヤとした不快感に包まれます。

中学時代を経て、調理師専門学生の時代なんて最悪です。リストカットのグロテスクなシーンを何度も見せられ、刃物の金属音や流れでる血によって、ピリついた不快感も倍増。まさに狂気。たぶん退席してしまう人もいるんじゃないでしょうか。私自身、「こんなの2時間以上も耐えられないぞ!?」と思いながら観ていました。

後半で反転する世界

洋介との出会いが、美紗子の世界を一変させます。前半からは想像もつかない美しさを見る事になりました。あれだけ嫌悪感を抱いていたサイコパス女に、気付けば同情しちゃってる自分がいるんですよね。あれだけのものを見せられたのに、幸せになってほしいと願ってしまうんですよ。いやぁまったく、してやられました。

かといって、美紗子は真っ当な人間になったわけではありません。生まれもって彼女は「平気で人を殺せてしまう」のですから、その根幹の部分は変わることもなく美化もできません。結局は「自分と自分が愛する人のためなら他人はどうだっていい」という考えに終始しますもんね。

恐ろしさの中に垣間見える美しさ。これがこの映画のすべてと言っていいでしょう。

ご都合主義が過ぎる

テーマは申し分ないのですが、どうにもストーリーの細部が雑ですね。ひとつの物語に運命的な偶然はひとつまでにしないと、複数回も奇跡が起これば途端にリアリティの無い馬鹿げた物語に見えてしまいます。

特に現代の話はちょっとひどい。たまたま同僚で、たまたまヤバイ境遇で、たまたま再会して伝言を頼まれる。こうなってくると物語に入り込むのは無理です。

他にもツッコミどころは多かったですね。殺人犯と分かっていながら脅迫する男が無警戒すぎたり、何も知らずにヤクザと結婚したり、そもそもガチのヤクザがあんな事するでしょうかね。しかもヤクザの事務所に乗り込んで女一人で、無傷で全員ぶっ殺して、しかもなぜか今更オナモミ落としていくし。

めちゃくちゃ細かいこと言うと、序盤で亮介が父にお茶を注いであげるとき、先に自分のコップに注いであったのが気になる。普通は相手のを先に注いで渡してから、自分のに注ぐでしょ。その後しばらくしてカニを食べるときは父のを先にほぐしてあげてたのにね!(←細かいウゼェ)

伏線もわりと早い段階で予想できてしまうし、残念な部分も多々ありました。

評価(レビュー)

総合満足度:☆☆☆☆☆  (5/10)
わくわく度:☆  (1/5)
キュンキュン度:☆☆  (2/5)
かなしみ度:☆☆☆  (3/5)
カンゲキ度:☆☆☆  (3/5)
びくびく度:☆☆☆☆  (4/5)
スッキリ度:☆  (1/5)

 

難しい主題を、うまく感情コントロールして魅せるべきところを魅せていたので、見応えはありました。俳優陣の怪演も光っていました。そのぶんストーリーの粗が目立ち、なんとも惜しい作品に仕上がってしまったなぁという印象です。

こういう重苦しくなりがちな作品では、都合の良すぎる展開やツッコミどころは極力なくさないと萎えてしまいます。軽い映画なら、そのへんも楽しみのうちに入るんですけどねぇ。

とまれ、清野菜名ちゃんカワイイ好きっていう事ですね。(?)

おわります!