映画『ダンケルク』感想・評価レビュー

みなさんは戦争映画、観れますか?苦手な人も多いかと思います。とくに実話となると必ずどこかに心苦しさを感じ、目を背けたくなりますもんね。

私は結構ね、観るんですよ。だけど平気なわけではなくて、それなりに気合を入れて臨むわけです。ましてや今回はクリストファー・ノーラン監督が初めて挑む、実話の戦争映画。半端な「お涙頂戴」作品になるはずもないので相応に腹をくくって鑑賞して参りました。

f:id:toshimaru104:20170913092138j:image

監督:クリストファー・ノーラン

出演:トム・ハーディ/マーク・ライアンス/ケネス・ブラナー/キリアン・マーフィー/ハリー・スタイルズ

あらすじ

フランス北端ダンケルクに追い詰められた英仏連合軍40万人の兵士。背後は海。陸・空からは敵――そんな逃げ場なしの状況でも、生き抜くことを諦めないトミー(フィオン・ホワイトヘッド)とその仲間(ハリー・スタイルズ)ら、若き兵士たち。一方、母国イギリスでは海を隔てた対岸の仲間を助けようと、民間船までもが動員された救出作戦が動き出そうとしていた。民間の船長(マーク・ライランス)は息子らと共に危険を顧みずダンケルクへと向かう。英空軍のパイロット(トム・ハーディー)も、数において形勢不利ながら、出撃。こうして、命をかけた史上最大の救出作戦が始まった。果たしてトミーと仲間たちは生き抜けるのか。勇気ある人々の作戦の行方は!?

(公式サイトより引用)

予告動画

 


映画『ダンケルク』予告2【HD】2017年9月9日(土)公開

感想(以下ネタバレ含む)

劇場ではなく戦場に行くつもりで観に行け!!一瞬たりとも気の緩みを許されない濃密な99分間、あなたは精神崩壊せずに生還できるか!?

 

館内が暗転して物語が始まると、そこには静かに荒廃した街並みと疲弊しきった英国兵士。ものの10秒で、窮地に立たされていると理解します。突然の銃声。この時点で私はもう作中に呑み込まれましたね。息もつかせぬ展開は全編クライマックスと言ってよいほど、エンドロールが流れるまで心臓のバクバクがおさまりませんでした。

物語は陸・海・空の3軸から成り立つ群像形式となっています。時間軸はズレていますが、交互に描かれていき、最終的に収束します。

海の町ダンケルクにてドイツ軍に包囲された、イギリスとフランスの兵士たち約40万人。まさに文字通り「背水の陣」ですね。

英国兵士トミーは、開始1分で一緒にいた味方を全員射殺され、仏国兵士の手助けあって命からがら海岸まで逃げ延びます。そこで対岸からの救出を待つわけですね。

空からの執拗な爆撃に何度も何度も襲われ、目の前で当たり前のように人が死んでいきます。しかしもはや、他人の死に気を配っていられない。【陸】のパートで主に描かれるのは「生への執着」といったところでしょうか。とにかく、生きたい生きたい。

ようく船に乗っても、戦闘機からの爆撃や魚雷が容赦なく襲い、何隻も沈没を繰り返されます。脱出が失敗するたびに胸がしめつけられる想いです。観てるこっちまで、逃げ出したくなりました。戦場がいかに恐ろしいか、ここまで体感できる作品に出会ったのは初めてです。

民間人の船長が息子とその友人とともに、軍の徴用を無視して自らダンケルクへと救出に向かいます。【海】のパートでは「救出、思いやり」が描かれていますね。

最初に救った一人の兵士は、砲撃のショックで気が動転しています。その兵士がパニックのあまり息子の友人に重傷を負わせてしまいます。自分のやった事を理解し、ようやく我に返ります。が、息子の友人は取り返しのつかないことに…。

多くの兵士を救って帰還する際、その兵士は船長の息子に「彼は大丈夫か?」と気まずそうに尋ねます。私は正直ぶん殴って海に放り投げたい気分でしたよ。助けてもらった身分で何て事してくれたんだ!と。しかし息子は「YES」の一言。ぐっときましたね…。

ダンケルクを襲撃する敵機を撃墜して、救出の手助けをする役割です。【空】パートは「英雄、犠牲」が描かれていますね。命を救うために命を懸ける。カッコ良すぎますよ。

パイロットは次々に敵を撃ち落としながらも、味方はやられ、最後は自分の一機のみになってしまいます。計器は故障し、帰還の燃料が尽きかけても撤退せず、最後まで戦います。そしてついにはエンジンが停止し、滑空しながら最後の敵機を堕とし、不時着します。当然そこは敵の中なわけで、囚われてしまうんですね。その勇姿には感動せざるを得ません。

生きるため、生かすため

登場人物たちの中には、「自分が生き残るために他人の犠牲はやむを得ない」・「他人を救うために自分の犠牲をかえりみない」という正反対のタイプがいます。後者のほうが偉い!というのは倫理上その通りなんですが、何が何でも生きたい気持ちってのは誰にでもあるわけで。その中間で揺れるトミーの台詞「仕方ない、でも間違ってる」には思わず歯をくいしばりましたよ。

生還後

33万人もの兵士たちは生きて帰ってきたことを祝福され、労いの言葉をかけてもらいます。ほとんどの兵士は生還できたことを喜んでいましたが、トミーは違うようです。「よくやった」と言われ、「逃げ帰っただけだ」と恥じると、「それで充分だ」と返されます。民間人のために戦いに行ったはずが、何もできず撤退し、民間人に助けられたわけですからね。新聞でも兵士たちは讃えられ、さらに鼓舞するような記事。戦争の恐怖と悲惨さを肌で感じたトミーは、果たしてどんな気持ちだったでしょうか。

救った兵士に殺された、船長の息子の友人。英雄として新聞に載せてもらうことで弔いをしましたが、やはり苦しいです。あの兵士ぶん殴りてぇ…と思ってしまう私は未熟者だなぁ。

評価(レビュー)

総合満足度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆  (9/10)
わくわく度:☆  (1/5)
キュンキュン度:☆  (1/5)
かなしみ度:☆☆☆☆  (4/5)
カンゲキ度:☆☆☆  (3/5)
びくびく度:☆☆☆☆☆  (5/5)
スッキリ度:☆☆☆  (3/5)

 

はい、めちゃくちゃ良かったです。観たことを後悔するほどの良作。この矛盾は観た人なら納得できるでしょう。

上映時間は短めですが、3時間くらいの超大作を観た後のように疲れ果てましたよ。CGをできるだけ使わないリアルで迫力ある映像と、緊迫感と不快感を煽りまくってくる音響。何度も「はぁっ!し、死ぬ!」と本気で感じてしまうレベルの臨場感ですからね。

しかし、血や肉片といったグロテスクな描写を一切見せずに、これだけの凄惨さを表現しているのが素晴らしい。

これまでのノーラン監督作品とは違う、そしてこれまでの戦争映画とは違う、斬新な作品でした。

 

前記事『三度目の殺人』につづき、連続で良作に出会えて幸せです。たまりませんな!

では、おわります。